オープンソースと商用RISC-Vライセンスモデル


11月 26, 2020

Arm, Cadence, Synopsysといった従来のプロセッサIPベンダーによる商用ライセンスについては誰もがよく理解しています. しかし, RISC-Vのオープン命令セットアーキテクチャ(ISA)を議論する際, 単語が正しく認識されていないため, RISC-Vが「オープンソース」であるといわれることが多々あります. また, コダシップやAndesのような商用RISC-V IPのベンダーを, RISC-Vの精神に則っていないと非難する人さえいます. しかし, 実際はどうでしょうか? RISC-VベースのプロセッサIPのライセンスモデルはどのようなものなのでしょうか?

オープンソース, オープンスタンダード, 商用とはそれぞれどういう意味なのか?

定義について簡単に見てみましょう. C言語, Verilog, HTTPなどのオープンスタンダードは, 独立した組織が維持する文書で定義されています. したがって, C言語はISO, VerilogはIEEE, HTTPはIETFによって維持管理されています. これらの組織は, 公平なルールに基づいて技術標準を維持しています. このようなオープンスタンダードは, 一般的に自由にアクセスすることができます

オープンソースとは, ソフトウェアパッケージのソースコードやハードウェアブロックのハードウェア記述言語ソースを, ライセンスによって公開することです. オープンソースのライセンスは, コピーレフトのような強い共有性を有すものから, Apacheのような寛容的なものまで様々であります. オープンソース・ライセンスは, コードの使用, 研究, 変更, 配布に関する権利を定義します. コピーレフトライセンスは, いかなる変更もオープンソースにすることを要求しますが, 寛容な(パーミッシブ)ライセンスはそうではありません

RISC-VはオープンスタンダードISA仕様であり, マイクロアーキテクチャやビジネスモデルを一切定義していません. したがって, RISC-Vマイクロアーキテクチャは, 作者の意向で商用IPライセンスにも, オープンソース・ライセンスにもすることができます. 何も規定されていないのです

古典的な商用プロセッサのIPライセンスでは, 一般的に下記の費用がかかります

  •     ベンダーのISAを使用する権利
  •     ベンダーのマイクロアーキテクチャを使用する権利
  •     保証
  •     ベンダーのエラー修正へのコミットメント
  •     免責

実際には, 保証は通常期限付きで, 補償も限定的です. しかし, バグが発見された場合ベンダーは設計を修正することを約束することになり, これは特にスケジュールが厳しい場合にはライセンシーにとって重要です. 知的財産権の補償とは, ライセンシーが特許侵害で訴えられた場合, ベンダーがライセンシーに代わって訴えを弁護するか, 解決することを意味します

従来のIPライセンスとアーキテクチャ・ライセンスモデル VS. RISC-Vのライセンスモデル

古典的なIPベンダーは, 自社のマイクロアーキテクチャだけでなく, 自社のISAも厳重に管理してきました. 通常のライセンスでは, ISAとマイクロアーキテクチャの使用を一括りにし, ライセンシーは成果物を変更する権利はありません. ごく稀に, ベンダーISAとライセンシー独自のマイクロアーキテクチャを組み合わせて使用できる, アーキテクチャライセンスを提供するベンダーもいますが, この手のライセンスは高額です. RISC-Vが革新的である理由の1つは, プロセッサ開発において最も価値のあるISAがオープンかつ無料であることです

 RISC-Vは無料ですか?オープンソースと商用のRISC-VベースIPコア

RISC-Vはマイクロアーキテクチャやライセンス方法を規定していないため, RISC-V IPコアには, オープンソース・ライセンスと商用ライセンスとの両方が存在します. オープンソース・ライセンスの場合, マイクロアーキテクチャのライセンス料も無料ですが, その一方で商用ライセンスと同様の利点がすべて得られるわけではありません. 一般に, 成果物には保証がなく「現状有姿」で受け入れなければなりません. 同様に, 商用ライセンスに付帯するような補償もありません. バグが発見された場合, オープンソース・コミュニティまたはライセンシーのいずれかが, それを修正することになります

商用ライセンスのRISC-Vコアでは, ISAは無料でライセンスされているため, マイクロアーキテクチャに関する費用のみが発生します. このライセンスでは, 通常商用ライセンスに付随する保証, 免責, バグフィックスのコミットメントの付帯が期待できます

RISC-Vに適したライセンスモデルの選び方

「RISC-Vは本当にオープンソースなのか」という質問をよく受けます. RISC-Vは, 企業がRISC-Vマイクロアーキテクチャを作成するためのオープンスタンダードです. そして, 企業はそのIPをオープンソースまたは商用としてライセンスすることができます. RISC-Vではどちらが正しい選択なのでしょうか?オープンソース・ライセンスと商用ライセンスのどちらにもメリットとデメリットがあります. あなたの設計プロジェクトに何が最適かを天秤にかける必要があります

コダシップでは, 商用RISC-V IPライセンスと, お客様がISAとマイクロアーキテクチャの両方を変更することを可能にするStudioテクノロジを提供しています. かつて, オープンソース・ライセンスと商用ライセンスは, 競争相手と見なされていました. しかし, ソフトウェアの世界では, マイクロソフトのような企業が両方のモデルを受け入れています. マイクロソフトは商用ライセンスを提供し, オープンソースプロジェクトをサポートし, クラウドベースのビジネスモデルを持っています. RISC-Vのオープンソース・ライセンスと商用ライセンスは, 共存・補完し合うことができるのです

Studioテクノロジ

RISC-V IPライセンス

Lauranne Choquin

Corporate Marketing Manager

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オープンスタンダードとは, 自動的にオープンソースを意味するのでしょうか?

RISC-Vはオープンソースのプロセッサを意味するのか」という問いに答える前に, 「オープンスタンダードは自動的にオープンソースを意味するのか」という問題を考えてみましょう

オープンスタンダードは, 技術の世界では広く普及しており, 通信プロトコルのTCP/IPは, 何十年も前からオープンスタンダードとなっています. 無線通信では, 複数のバージョンがあるWi-FiやBluetoothはオープンスタンダードです

 IC設計において, VerilogはIEEEが維持するオープンスタンダードであり, ハードウェア記述言語として広く使用されています. またVerilogは, 様々な商用およびオープンソースのシミュレータで使用されています. Verilogに対応した商用シミュレータとしてはIncisive, Questa, VCSが有名ですが, オープンソースのVerilogシミュレータとしてはVerilatorやCverがあります. 一般的に, 商用Verilogシミュレータはその高い品質と性能で知られています

RISC-Vプロセッサには, オープンソースと商用があります

オープンスタンダードだからといって, そのスタンダード仕様を利用した商用製品が排除されるわけではありません. RISC-Vの場合, 標準化されているのは命令セットアーキテクチャだけで, マイクロアーキテクチャ実装はプロセッサ開発者に委ねられています. そのため商用プロセッサコアにもビジネスチャンスは十分に残っています. RISC-Vをベースとした商用プロセッサIPコアは, マイクロアーキテクチャや実装などにおいて, 独自の機能や付加価値を持てます

オープンソースのRISC-Vプロセッサコアには, カリフォルニア大学バークレー校のZscale, Rocket, BOOMなどがあります. そしてCodasip RISC-Vプロセッサのような商用プロセッサコアも存在します

Roddy Urquhart

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