RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める


3月 24, 2022

半導体業界は. この30~40年で大きく変わりました. 1980年頃. 一部の大手半導体企業は. 製品の設計・製造だけでなく. 製造装置や社内EDAツールまで自社で作るなど. 強い垂直統合を進めていました. 現在では. ほぼすべての半導体企業がサードパーティの装置を使用してICを製造し. サードパーティのEDAツールやIPを使用して設計を行っています. 半導体産業の分業が起こった主な理由は. オープンスタンダードの使用によるものです

オープンスタンダードの定義に明確なものはありませんが. 一般的には. 合理的かつ差別なく利用可能であることです. 多くの場合. 特にSoC設計では. そのような仕様はロイヤリティフリーで利用可能です. 多くのオープンスタンダードは企業ではなく. IEEE. OSI. IETF(インターネット技術タスクフォース)のような独立した団体が所有しています. このような場合. 仕様のさらなる開発は. 広く参加者を募ったオープンなプロセスで行われます

オープンスタンダードとSOC設計

SoCのオープンスタンダードは. ハードウェアとソフトウェアの両面から検討する必要があります. 組み込みソフトウェアでは. C言語とC++言語がオープンスタンダードとして確立されています. そのため. ミドルウェアやリアルタイムOS(RTOS)は. これらの言語を使用したソースコードが提供されることが多いです. プロセッサまたはペリフェラルへの依存度が高い場合には. 多少の移植が必要になることもありますが. 一般的には設計チームが対応可能な範疇です

現在の多くの機器. 特にIoTでは. SoCは有線または無線通信を備えています. このようなリンクには. イーサネットやBluetooth LEなどのオープンスタンダードに基づく通信プロトコルが必要です. また. このようなネットワーク機器は何らかのセキュリティを必要とする可能性が高く. ここでもオープンスタンダードの採用により. セキュアな通信が可能となっています

デジタルハードウェア設計では. マイクロアーキテクチャをハードウェア記述言語で記述します. VerilogとVHDLはともにIEEEのオープンスタンダードで. RTL記述からゲートレベルを合成します. プロセッサとペリフェラルはAMBAバスで接続されることが多く. これはArmが所有する一連の規格ですが. ロイヤリティフリーで利用できます

検証には. 多くの場合. 業界団体Accelleraが管理するオープンスタンダードのUVM(Universal Verification Methodology)が使用されています. パワーインテントはUPF(Unified Power Format). これもAccelleraの仕様で表現することができます

最後に. 物理設計レベルでは. シリコン製造のためにレイアウトが必要となります. 数十年にわたり. GDSII(元々はCalma社が開発)が主な交換フォーマットとして使用されてきました. 最近では. レイアウトのオープンスタンダードとしてOASIS(Open Artwork System Interchange Standard)が使用されています

オープンスタンダードの利点

オープンスタンダードは. 産業界に多くの利益をもたらしてきました. 第一に. チップ間. ソフトウェアパッケージ間. 設計ツール間の相互運用性を実現しました. これによって分業が可能となりました

第二に. オープンスタンダードがあれば. 製品やベンダーのエコシステムが発展する可能性があります. 例えば. C言語では. ソフトウェア開発ツールやミドルウェア. 組み込みソフトウェアの再利用を目的としたRTOS製品などが多数提供されています. ハードウェアレベルでは. Verilog. UVM. OASISなどのオープンスタンダードを利用したEDAツールが数多くあります. これは. 開発チームがベンダーを幅広く選択でき. 単一のベンダーに依存する必要がないことを意味します

第三に. オープンスタンダードであれば. 一通りの仕様は既に完成されており. 製品メーカーは実装による差別化に注力することができます

しかし「部屋の中の象=いままで腫物のように話題にされていなかったこと」は. オープンスタンダードからは明らかなギャップがありました. ISAは. ハードウェアとソフトウェアの間の重要なインターフェイスを表しますが. これは今までほぼ独占的にプロプライエタリISAが保持してきました

RISC-Vでオープンスタンダードのギャップを埋める

RISC-Vによって. 初めて本当の意味でのオープンスタンダードISAが誕生し. 業界からの支持を得ることができました. このISAは. 非常に軽量な基本整数命令セットと. 標準およびカスタム拡張柔軟性を兼ね備えています. RISC-V ISAはマイクロアーキテクチャを規定しないため. 例えばコダシップは. 3段. 5段. 7段のパイプラインを持つRISC-Vプロセッサコアを開発し. 設計者はコアをニーズに合わせて選択することができます. IPベンダーはマイクロアーキテクチャで差別化を図ることができます

組み込みソフトウェアメーカーやSoC開発者にとってすぐ恩恵を感じることができるのは. ミドルウェアをバイナリ(ソースコードだけでなく)として提供できることです. これだけでも. 組み込みソフトウェア開発者の作業を軽減し. RISC-Vの普及を加速させることができるはずです

オープンISAの利用は. プロセッサIPベンダー. ソフトウェア開発ツールプロバイダー. ソフトウェア企業. 半導体企業を包含するエコシステムを急速に拡大させるきっかけとなるものです. ネットワーク分野では. 1990年頃にプロプライエタリ製品のトークンリングが. 成長したイーサネットのエコシステムによって駆逐されたように. 今後10年でプロプライエタリISAはRISC-Vによって駆逐されると予想されます

最後に. 自社でプロセッサコアを開発する企業には. 基本命令セットはロイヤリティフリーで提供されます. RISC-V ISAのモジュール性と拡張性により. 基本的な命令はすでに定義済みであり. 開発者は自社のコアやアクセラレータなど付加価値に集中することができます

RISC-Vの採用は. 組み込み型SoC開発者にとってリスクの少ない選択選肢となりました. SoCのオープンスタンダードにおけるギャップが解消され. ハードウェアとソフトウェアの両方の開発者にとって有益なものとなりました

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い

8月 12, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは未来なのか?

7月 27, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは何の略?

3月 17, 2021
By Roddy Urquhart

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い


8月 12, 2021

長年, プロセッサIPコアのコンフィギュレーションについて語られてきましたが, オープンRISC-V ISAへの関心が高まるにつれ, カスタマイズについて語られることが多くなっています. では, プロセッサ・コンフィギュレーションとカスタマイズの違いは何でしょうか?

CPUコンフィギュレーションはピザ屋にピザを注文するのと同じ

簡単な例えとして, ピザの注文を思い浮かべてください. 多くのピザ屋さんでは, 標準的な何種類かのピザと, 限られたリストからトッピングを選ぶことができますよね. その限られた中から, 自分好みの味にコンフィグレーションしてピザを注文します.

プロセッサIPベンダーは今までオプションのキャッシュ, 密結合メモリ(TCM), オンチップデバッグなど, いくつかの標準オプションを顧客に提供し, それらを組み合わせて顧客のニーズに合った構成を提供してきました. ただし, コアそのものは変わらず, もしくはごく限られたバリエーションに留められていました. 命令セット, レジスタセット, パイプラインももちろんそのままで, キャッシュなどのオプションブロックだけを変えることが許されている状況です.

CPUのカスタマイズは, シェフがあなたのために特別なピザを作ってくれるのと同じ

今では多くのユーザーが, プロセッサ・コアにより高い専門的な特性と可変性を求めています. これは, シリコン面積と消費電力を抑えながら, 性能を向上させるためかもしれません. それを実現するにはいくつかの方法があるでしょう. 例えば, ターゲット・アプリケーションに最適化したカスタム命令の作成やポートやレジスターを追加するなど. しかしこのような変更は, プロセッサ・コアそのものを根本的に変えてしまうことになります.

ピザの例え話に戻りますが, カスタマイズとは, あなた専用シェフがピザの基本レシピを持っているけれども, トッピングを自由自在に変えてくれるだけではなく, 小麦粉, オイル, イースト酵母といった標準的な材料を貴方好みのものに変更して, ピザの基本から変更してくれるようなものです. これこそ, プロセッサをカスタマイズする大きな理由と同じではないでしょうか.

そして, これこそがRISC-Vがもたらした可能性です. 既存のRISC-Vプロセッサに, オプションの標準拡張機能や非標準のカスタム拡張機能を追加して, 特定の要件に適合するようにカスタマイズすることができるのです.

RISC-VとCODASIP(コダシップ)でカスタムコアを作成する

IPサプライヤの中には, コアの拡張を許可しているところもありますが, カスタマイズの範囲が最も広いのはRISC-Vです. RISC-VのISAは, 当初からカスタム命令をサポートするように考えられています. コダシップのRISC-Vプロセッサは, アーキテクチャ記述言語CodALを用いて開発されており, Codasip Studioで簡単にカスタマイズすることが可能です. カスタム命令を使用してドメイン特化型プロセッサを作成する方法の詳細については, 当社のホワイトペーパーをダウンロードしてください.

ホワイトペーパーをダウンロードする

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める

3月 24, 2022
By Roddy Urquhart

プロセッサをカスタマイズする理由とその方法

10月 1, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは未来なのか?

7月 27, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは未来なのか?


7月 27, 2021

RISC-Vの将来性は?これはよく聞かれる質問ですが, 仮に「RISC-Vはプロセッサ市場で中心的なISAになるのか」という意味の質問だとしましょう. RISC-Vの展開は確かに早い状況で, この5年間で大きく変化してきています

RISC-Vとは何? RISC-Vは何をする?

RISC-Vは2010年にカリフォルニア大学バークレー校で生まれ, 産業界に浸透するまでに数年を要しました. 大きな一歩となったのは, 2015年にRISC-Vの採用を推進するため, NPO法人としてRISC-V Foundationが設立されたことです. 2020年初頭, その活動はスイスに本拠を置くRISC-V Internationalとなりました

2017年のEmbedded Worldに出展した際, コダシップのブースにはRISC-Vのロゴが大きく掲げたのを覚えています. 多くの来場者から「RISC-Vって何?」と質問され, 欧州での認知度が低いことが伺えました. その後, 状況は一変し, どの地域でもRISC-Vは高い関心を集めています

長年, プロセッサはMPU, MCU, GPU, APU, DSPなどに分類される傾向がありました. 携帯電話など一部のデバイスでは, 複数の種類のプロセッサコアを組み合わせて設計することもありました. 例えば2016年を振り返ってみると, MPUの世界はx86アーキテクチャが主流で, ArmはAPU(アプリケーション・プロセッサや携帯電話のエコシステム全般)とMCUの両分野で勢力を伸ばしていました

RISC-VはArmより優れているのか? RISC-VはIntel/AMDのx86より優れているのか? RISC-Vは間違いなくそれらと異なり, 新たなチャンスをもたらします. RISC-Vが可能にする市場の新トレンドをいくつか確認できます. そのうちの3つを見てみましょう

トレンド1: RISC-Vの性能は向上している

RISC-V初期は, 主に学術的なプロジェクトで使用されていました. しかし, 2016年までには, 多くの商業企業がRISC-V ISAをベースにした組み込み用マイコンを開発するようになりました. ここまでの前進は, RISC-Vコミュニティにとって比較的容易なステップだったと言えるかもしれません. なぜなら組み込み開発者は, ソースコードとして提供されるミドルウェアなど, さまざまなソースからシステムを構築することに慣れていたからです. また, 組み込み用のコアは, シンプルなのです

RISC-Vプロセッサの性能は上昇傾向にある  出典 コダシップ

より難しいのは, アプリケーション・プロセッサへの移行で, LinuxやAndroidのようなリッチなOSをサポートするためには, かなり複雑な処理が必要になります. 携帯電話アプリケーションの場合, 複雑なエコシステムが存在し, RISC-Vベンダーがサポートするには時間がかかると思われます. しかし, Linuxを使用するシステムには, RISC-Vアプリケーション・プロセッサを使用する機会が多くあり, ミッドレンジ性能に対応するコダシップA70のようなIPコアの選択肢もあります

今後, ハイパフォーマンス・コンピューティング向けに複雑なRISC-Vコアを作るサプライヤーが増えることが予想されます

トレンド2:RISC-Vはプロセッサの垣根を取り払う

半導体のスケーリングが崩壊している中, 従来のプロセッサとの境界が曖昧になりつつあります. 費用対効果の高いパフォーマンスをオンチップで実現するために, ドメインに特化したアクセラレータの需要が増えており, 要求されるワークロードに合わせて設計をチューニングすることがますます必要になってきています

RISC-V ISAは, 最小限の基本整数命令セットを持ち, カスタム拡張が可能なため, 特殊なアクセラレータを作成するための理想的な出発点となっています

携帯電話のように短期的にアーキテクチャを変更する可能性が低く複雑なレガシーソフトウェア必要とするアプリケーションもありますが, そのような制約がないものもあります. AI(人工知能)のような新しいアプリケーションは, 柔軟性とカスタマイズ性を備えたオープンISAのRISC-Vに移行しつつあります. さらに将来の話になりますが, レガシーへの配慮が不要になった時には, RISC-Vはさらに大きなシェアを獲得する可能性を秘めています

トレンド3:顧客は特定サプライヤーによる独占を避けたい

最後に, プロセッサ市場の変化が熱望されています. 1980年代以降, マイクロプロセッサはIntel/AMDのx86デュオが支配してきましたが, 1990年代後半, 携帯電話用プロセッサ市場ではArmがデファクト・スタンダードになりました. さらに, その支配は隣接する組込み機器の分野にも拡大しました

この10年, エンジニアの「Arm疲れ」や, 主要市場における支配的な立場や囲い込みに対する不穏な空気を感じています. しかし, Armが幅広い製品群でスイスのような「中立性」を主張する限り, Armのライセンスを導入しても誰も解雇されるようなことはありませんでした. ソフトバンクに買収され, その中立性は著しく損なわれ, 失敗に終わったNvidiaとの合併の試みも, 多くのライセンシーを不安にさせました

フリーでオープンなRISC-V ISAは, 広く関心を集めており, 市場に大きな変化をもたらすきっかけとなりそうです. オープンスタンダードな仕様であるため, 今後何十年にもわたって利用できる可能性を持ち, 複数のサプライヤーによるプロセッサコア提供のため, ベンダによる囲い込みを回避することができます

RISC-Vの出荷数は大きく伸びることが予想される 出典: Semico Research Corporation

x86やArmのような歴史あるアーキテクチャが一夜にして消滅するとは誰も思っていませんが, この数十年で初めて, 設計者はRISC-Vという実現可能な代替手段を手に入れたのです. RISC-Vの適用範囲がますます広がりエコシステムも急速に拡大しているため, RISC-Vの市場シェアは今後も拡大し続けるでしょう. このことは, Semico Researchなどの市場レポートが, 2025年までに624億個のRISC-V CPUコアが消費されると予測していることからもうかがえます

RISC-Vは, 今後急速に発展し, 中心的なアーキテクチャになる可能性が高いことは確かです

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める

3月 24, 2022
By Roddy Urquhart

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い

8月 12, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは何の略?

3月 17, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは何の略?


3月 17, 2021

RISC-Vは, Reduced Instruction Set Computer 5の略です. 5という数字は, 1981年以降にカリフォルニア大学バークレー校で開発されたRISCアーキテクチャの世代数を表しています. 「リスクファイブ」と発音し, 「RISC five」「R5」と表記されることもあります.

RISCのコンセプトは(スタンフォード大学の並列MIPS開発と同様), プロセッサ命令のほとんどが多くのコンピュータプログラムで使用されていない, という事実に端を発しました. プロセッサ内部に使われない命令のために, デコード回路が構成され, 不必要な電力とシリコン面積が消費されている状況でした. ではどう改善したらいいのでしょう. 命令セットを簡素化し, 代わりにレジスタリソースを大きくするという選択肢に着目しました

RISC Iプロジェクトは, わずか31もしくは32個のビット命令と驚くべきことに78個のレジスタを実装していました. このプロジェクトでは, 後にSPARCアーキテクチャで採用されることになるレジスタウィンドウという概念が導入され, その後のRISC IIプロジェクトではさらに大規模なレジスタファイル(138本)が実装されました. さらに, RISC IIでは16ビット命令も導入され, コード密度の向上に貢献しました. RISC IIIとRISC IVという用語は, それぞれ1984年のSOARプロジェクトと1988年のSPURプロジェクトを指しています

RISC-Vプロジェクトは, 特許やライセンス契約に縛られたプロプライエタリでクローズドなISAの存在が, その動機の一つになっていました. カリフォルニア大学バークレー校のクルステ・アサノビッチ氏は, 学術・産業両方のプロジェクトに適用できる, フリーでオープンなISAを作ることに大きなメリットがあると確信していました. 以前のRISCプロジェクトに携わっていたデイビッド・パターソン氏も参加しました. 2010年に3カ月間のプロジェクトを開始し, 新しい命令セットが開発され, 2011年に最初のRISC-V ISA仕様の公開につながりました

他方面からの貢献を管理するため, 2015年にオープンな共同コミュニティとしてRISC-V Foundation(現RISC-V International)が設立され, ISAのオリジナル開発者はRISC-Vに関する権利をこの団体に移管しました. それ以来, RISC-V InternationalはRISC-V ISAのさらなる開発を管理しています

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める

3月 24, 2022
By Roddy Urquhart

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い

8月 12, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vは未来なのか?

7月 27, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vはオープンソースのプロセッサという意味なのか?


8月 8, 2017

「RISC-Vはオープンソースのプロセッサを意味する」これは近年よく耳にする言葉ですが, しかし, これは本当なのでしょうか, それとも嘘なのでしょうか. その答えは, このブログ記事に書かれています

オープンスタンダードとは, 自動的にオープンソースを意味するのでしょうか?

RISC-Vはオープンソースのプロセッサを意味するのか」という問いに答える前に, 「オープンスタンダードは自動的にオープンソースを意味するのか」という問題を考えてみましょう

オープンスタンダードは, 技術の世界では広く普及しており, 通信プロトコルのTCP/IPは, 何十年も前からオープンスタンダードとなっています. 無線通信では, 複数のバージョンがあるWi-FiやBluetoothはオープンスタンダードです

 IC設計において, VerilogはIEEEが維持するオープンスタンダードであり, ハードウェア記述言語として広く使用されています. またVerilogは, 様々な商用およびオープンソースのシミュレータで使用されています. Verilogに対応した商用シミュレータとしてはIncisive, Questa, VCSが有名ですが, オープンソースのVerilogシミュレータとしてはVerilatorやCverがあります. 一般的に, 商用Verilogシミュレータはその高い品質と性能で知られています

RISC-Vプロセッサには, オープンソースと商用があります

オープンスタンダードだからといって, そのスタンダード仕様を利用した商用製品が排除されるわけではありません. RISC-Vの場合, 標準化されているのは命令セットアーキテクチャだけで, マイクロアーキテクチャ実装はプロセッサ開発者に委ねられています. そのため商用プロセッサコアにもビジネスチャンスは十分に残っています. RISC-Vをベースとした商用プロセッサIPコアは, マイクロアーキテクチャや実装などにおいて, 独自の機能や付加価値を持てます

オープンソースのRISC-Vプロセッサコアには, カリフォルニア大学バークレー校のZscale, Rocket, BOOMなどがあります. そしてCodasip RISC-Vプロセッサのような商用プロセッサコアも存在します

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める

3月 24, 2022
By Roddy Urquhart

プロセッサをカスタマイズする理由とその方法

10月 1, 2021
By Roddy Urquhart

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い

8月 12, 2021
By Roddy Urquhart

RISC-Vとは?見逃すべきでない理由


9月 22, 2016

今まさに起きているRISC-V革命が半導体業界のビジネスのあり方を変えようとしています. しかし, RISC-Vが正しく理解されていないことも多いようです. RISC-Vはオープンソースのプロセッサではありません. ここでは「RISC-Vとは何なのか」という疑問への回答と, なぜコダシップがRISC-Vにこだわるのか, そしてあなたもそれを見逃すべきではない理由をお話ししたいと思います.

RISC-Vとは?

RISC-Vは, 命令セット・アーキテクチャ(ISA)のオープンな仕様です. つまり, Intel/AMDプロセッサのx86 ISAや最新ArmプロセッサのArmv8 ISAと同じように, ソフトウェアを実行するプロセッサとの対話手段です. RISC-Vのポジションは, 特定企業が権利を有するそれらISAと少し異なります. RISC-V ISAはオープンな仕様なので(商用とオープンソースのアーキテクチャ・ライセンスについては, 別のブログ記事で説明), 誰でもRISC-V ISAを使ったプロセッサを作ることができます. よく次の2つの質問をいただきます. 「RISC-Vはプロセッサなのか?」「RISC-Vはオープンソースのプロセッサなのか?」 RISC-VはISAの仕様を指し, プロセッサそのものでもなく, 実装されたソースコードでもありません. 先の2つの質問の答えは共に「No」であることがお分かりいただけましたでしょうか.

RISC-V VS. ARM OR INTEL/AMD?

お客様に製品を供給するベンダにとっては, 囲い込みの成功は喜ばしいことです. なぜならベンダが一度囲い込みしたお客様は, その後競合他社製品に変更することが非常に難しくなるからです. 囲い込みを成功させる最良の方法は「可もなく不可もない必要十分な製品」と, 「リッチなエコシステム」を作り上げることです. そうすれば一度囲い込まれたお客様は, リッチなエコシステムの導入に多くの投資をしてしまい, 抜け出すタイミングを逸し, 非常に長い間囲い込みされる結果となります. 競合する新興ベンダは成功するためにより良い製品を提供するだけでなく, 同等のリッチなエコシステムを構築しなければなりません. しかし, お客様が囲い込まれたソリューションと新しいソリューションがもたらすメリットを1対1で比較をすることは, 多くの場合難しいと思われます.

「IBMを買っても誰もクビにならない」という昔のことわざのように, 最近では「Armプロセッサを使っても誰もクビにならない」というのが通説になっています. しかし, これには負の側面もあります. もし, 企業が固有のソリューションを生かした差別化ビジネスを成し遂げられなければ, 進化は停滞して行きます. そして企業はお客様を満足させる必要十分だけの投資しかしなくなり, 衰退して行きます.

RISC-Vは, このような状況を変化させ始めています. なぜならRISC-V仕様をベースに共通化されたソフトウェア・エコシステムは, プロセッサ・ベンダが異なっても流用できるため, プロセッサ・ベンダには色々なアプリケーションに対する製品のメリットで競争することが自然と求められます. 結果, プロセッサ・ベンダ間の競争は激しくなり, 組込みプロセッサの技術革新の大幅な加速がもたらされ, お客様は「可もなく不可もない必要十分な製品」のクオリティで足踏みする必要がなくなります. また, 新しいプロセッサのベンチャー企業は, それぞれで固有の高価なエコシステムを構築する必要がないため, プロセッサ開発に集中できます. そして多くの新しい革新的なプロセッサ企業が登場することになります.

商用アーキテクチャ・ライセンスのデメリットは?

お客様にとっては何もデメリットはありません. でもプロセッサIPベンダにとって, 「可もなく不可もない必要十分な製品」ではもうビジネスできなくなるのです. コダシップのようなベンダは, お客様のニーズを満たし, それを上回る最高のソリューションを提供しなければお客様は簡単に新しいベンダに乗り換えてしまうでしょう. RISC-VはプロセッサIPのコモディティ化につながるというアナリストもいますが, 私たちは専門化とイノベーションにつながると考えています. RISC-Vは底辺の競争ではなく, むしろ付加価値をお客様が手にするチャンスとなるでしょう.

RISC-V ISAはオープンソース?

RISC-V仕様をはじめに作成した多くの学術機関, 特にUC-Berkleyの活動により, RISC-V ISA仕様の実装コアがオープンソースで多数公開されています. オープンな仕様でなければ不可能だった, さまざまな学術機関やオープンソースのSoCプロジェクトがすでに実現しています. しかし, より重要なのは, 民間企業が独自のRISC-Vプロセッサ実装を自由に設計できることです. これにより, お客様の選択肢はさらに広がります.

RISC-Vとアプリケーションに最適化されたプロセッサとコダシップの関係は?

RISC-Vはモジュラー化された拡張可能なISAセットです. これが意味することは, プロセッサは与えられたアプリケーションに対して, 最小限の命令セット, クリーンに定義された標準拡張, そしてカスタム拡張を実装できるのです. あるアプリケーションに必要な最小限の命令セットが実装されている限り, そのアプリケーションは互換性のあるプロセッサ上でも動作します.

これにより, アプリケーションに最適化されたプロセッサの最大の障壁の一つである, プロセッサ周辺の補助的なソフトウェアの開発に必要な労力が不要になります. このように, これまでDSP等で多用されてきたASIP(Application Specific Instruction-set Processor)の多くは, ソフトウェア開発環境が限定された深~い組み込み環境で使用されてきました. 共通のソフトウェア・エコシステムを持つということは, お客様がどのプロセッサにもアプリケーション拡張機能を自由に追加できることを意味し, デメリットなく, 改善点を活用することができます.

「多くのシステムにとって最適なプロセッサとは, その目的に合わせてチューニングされたものである」ブログ記事スケーラブルでないRISCアーキテクチャを拡張する方法をご覧ください.

RISC-V仕様の管理は?

この仕様はRISC-V Internationalによって維持されており, 会員にはソフトウェア, システム, 半導体, IPなど業界全体から(コダシップを含む)構成されています. 会員企業の焦点は, Arm社などに匹敵する, あるいはそれを上回るようなハードウェアとソフトウェアのリッチなエコシステムを構築することです.

RISC-Vの未来は?

残念ながら私は将来が見える水晶玉を持っていません. ただし長年半導体業界に携わってきて言えることは, プロセッサIPの競合他社も含めて様々な企業がこれほどまでに協力して, 新しい仕様に関心を持ち, その実現に向けて動いているのを見たことがない, という事実です.

RISC-Vは未来なのか?エンタープライズ・ソフトウェアの分野がオープン・スタンダードに基づいて構築できるようになった時(Linuxや他OSS等)と同じような, 爆発的なイノベーションと成長が見込めると私たちは期待しています.

「潮の満ち引きは, すべての船を持ち上げる」と言われるように, これからの数年間は非常にエキサイティングになることでしょう!

Roddy Urquhart

Related Posts

Check out the latest news, posts, papers, videos, and more!

RISC-VでSoCオープンスタンダードのギャップを埋める

3月 24, 2022
By Roddy Urquhart

プロセッサをカスタマイズする理由とその方法

10月 1, 2021
By Roddy Urquhart

プロセッサのコンフィグレーションとプロセッサのカスタマイズの違い

8月 12, 2021
By Roddy Urquhart