半導体業界は. この30~40年で大きく変わりました. 1980年頃. 一部の大手半導体企業は. 製品の設計・製造だけでなく. 製造装置や社内EDAツールまで自社で作るなど. 強い垂直統合を進めていました. 現在では. ほぼすべての半導体企業がサードパーティの装置を使用してICを製造し. サードパーティのEDAツールやIPを使用して設計を行っています. 半導体産業の分業が起こった主な理由は.
オープンスタンダードの使用によるものです オープンスタンダードの定義に明確なものはありませんが. 一般的には. 合理的かつ差別なく利用可能であることです. 多くの場合. 特に
SoC設計では. そのような仕様はロイヤリティフリーで利用可能です. 多くのオープンスタンダードは企業ではなく. IEEE. OSI. IETF(インターネット技術タスクフォース)のような独立した団体が所有しています. このような場合. 仕様のさらなる開発は. 広く参加者を募ったオープンなプロセスで行われます
オープンスタンダードとSOC設計
SoCのオープンスタンダードは. ハードウェアとソフトウェアの両面から検討する必要があります. 組み込みソフトウェアでは. C言語とC++言語がオープンスタンダードとして確立されています. そのため. ミドルウェアやリアルタイムOS(RTOS)は. これらの言語を使用したソースコードが提供されることが多いです. プロセッサまたはペリフェラルへの依存度が高い場合には. 多少の移植が必要になることもありますが. 一般的には設計チームが対応可能な範疇です 現在の多くの機器. 特にIoTでは. SoCは有線または無線通信を備えています. このようなリンクには. イーサネットやBluetooth LEなどのオープンスタンダードに基づく
通信プロトコルが必要です. また. このようなネットワーク機器は何らかのセキュリティを必要とする可能性が高く. ここでもオープンスタンダードの採用により. セキュアな通信が可能となっています デジタルハードウェア設計では. マイクロアーキテクチャを
ハードウェア記述言語で記述します.
VerilogとVHDLはともにIEEEのオープンスタンダードで. RTL記述からゲートレベルを合成します. プロセッサとペリフェラルは
AMBAバスで接続されることが多く. これはArmが所有する一連の規格ですが. ロイヤリティフリーで利用できます 検証には. 多くの場合. 業界団体Accelleraが管理するオープンスタンダードの
UVM(Universal Verification Methodology)が使用されています. パワーインテントは
UPF(Unified Power Format). これもAccelleraの仕様で表現することができます 最後に. 物理設計レベルでは. シリコン製造のためにレイアウトが必要となります. 数十年にわたり. GDSII(元々はCalma社が開発)が主な交換フォーマットとして使用されてきました. 最近では. レイアウトのオープンスタンダードとしてOASIS(Open Artwork System Interchange Standard)が使用されています
オープンスタンダードの利点
オープンスタンダードは. 産業界に多くの利益をもたらしてきました. 第一に. チップ間. ソフトウェアパッケージ間. 設計ツール間の
相互運用性を実現しました. これによって分業が可能となりました 第二に. オープンスタンダードがあれば. 製品やベンダーの
エコシステムが発展する可能性があります. 例えば. C言語では.
ソフトウェア開発ツールやミドルウェア. 組み込みソフトウェアの再利用を目的としたRTOS製品などが多数提供されています. ハードウェアレベルでは. Verilog. UVM. OASISなどのオープンスタンダードを利用した
EDAツールが数多くあります. これは. 開発チームがベンダーを幅広く選択でき. 単一のベンダーに依存する必要がないことを意味します 第三に. オープンスタンダードであれば. 一通りの
仕様は既に完成されており. 製品メーカーは実装による
差別化に注力することができます しかし「部屋の中の象=いままで腫物のように話題にされていなかったこと」は. オープンスタンダードからは明らかなギャップがありました. ISAは. ハードウェアとソフトウェアの間の重要なインターフェイスを表しますが. これは今までほぼ独占的に
プロプライエタリISAが保持してきました
RISC-Vでオープンスタンダードのギャップを埋める
RISC-Vによって. 初めて本当の意味でのオープンスタンダードISAが誕生し. 業界からの支持を得ることができました. このISAは. 非常に
軽量な基本整数命令セットと. 標準および
カスタム拡張の
柔軟性を兼ね備えています.
RISC-V ISAはマイクロアーキテクチャを規定しないため. 例えばコダシップは. 3段. 5段. 7段のパイプラインを持つRISC-Vプロセッサコアを開発し. 設計者はコアをニーズに合わせて選択することができます. IPベンダーはマイクロアーキテクチャで差別化を図ることができます
組み込みソフトウェアメーカーやSoC開発者にとってすぐ恩恵を感じることができるのは. ミドルウェアをバイナリ(ソースコードだけでなく)として提供できることです. これだけでも. 組み込みソフトウェア開発者の作業を軽減し. RISC-Vの普及を加速させることができるはずです オープンISAの利用は. プロセッサIPベンダー. ソフトウェア開発ツールプロバイダー. ソフトウェア企業. 半導体企業を包含する
エコシステムを急速に拡大させるきっかけとなるものです. ネットワーク分野では. 1990年頃にプロプライエタリ製品のトークンリングが. 成長したイーサネットのエコシステムによって駆逐されたように. 今後10年でプロプライエタリISAはRISC-Vによって駆逐されると予想されます 最後に. 自社でプロセッサコアを開発する企業には. 基本命令セットは
ロイヤリティフリーで提供されます. RISC-V ISAのモジュール性と拡張性により. 基本的な命令はすでに定義済みであり. 開発者は自社のコアやアクセラレータなど付加価値に集中することができます RISC-Vの採用は. 組み込み型SoC開発者にとってリスクの少ない選択選肢となりました.
SoCのオープンスタンダードにおけるギャップが解消され. ハードウェアとソフトウェアの両方の開発者にとって有益なものとなりました